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「ズルタンじいさん」は童話界屈指のもやもや話!?

あるところにズルタンという名前の犬がいました。
ズルタンは主人に対し、とても忠実に生きてきましたが、その主人に殺されようとしていました。
ズルタンが年老いて泥棒のひとりも捕まえられなくなったと思われたからです。

絶体絶命のズルタンでしたがそこに知恵を授けてくれる狼が現れました。
狼は「自分が飼い主夫婦の子供を攫うから、ズルタンが子供を取り返し2人に手柄を見せつけるんだ。そうすれば殺される心配がなくなるどころか今までよりずっと大事にしてもらえる筈だ」と言います。

ズルタンは狼の意見を聞き入れ作戦は実行されました。
作戦が上手くいったのでズルタンが飼い主夫婦に大事にされるようになるところまでは計画どおりです。

作戦が終わると狼はこう言いました。
「今度はお前がおれを助けてくれ。おれは明日、お前のところにいる羊を一匹盗っていくが見て見ぬ振りをしてほしいんだ」

しかしズルタンは主人に忠実な犬。
この申し入れを断りました。

狼はまさか本気で断られたとは思わなかったので後日計画を実行してしまいます。
ズルタンから狼の計画を聞いた主人は盗みに入った狼を懲らしめました。
狼はズルタンを恨み、復讐するため森に呼び出しますが自らの勘違いにより復讐に失敗してしまうのでした。
(完)

完訳グリム童話集〈3〉 (ちくま文庫)

 
これがグリム童話に収録されている「ズルタンじいさん」という話のあらすじです。
私は思いました。

この話、ハッピーエンドってことで良いの??

確かにズルタン側から見ればハッピーエンドなんでしょうけど、なんだかもやもや。
だって狼はズルタンにとって命の恩人の筈。
それなのにあっさり告げ口しちゃうんですよ。

年老いて役に立たなくなったから殺そう!
と言い放ったご主人様なのにそれでも忠義を貫き通すなんて……。

もしズルタンの気持ちが少しでも作中に書かれていればこんなにもやもやしていないと思います。

例えばその昔ズルタンは野良犬で、飢えていたところを今のご主人様が助けてくれたエピソードがあって!
だからぼくを生かすも殺すもご主人様次第なんだ!
とか書いてあれば「そうか、そうか」ってなると思うんですよね。

でもズルタンについては「忠実な老犬」以外の情報がほとんど存在しません。
そのせいでちょっと薄気味悪さみたいなものがあるんです。
「こいつはいったい何を考えてるんだ?」
という。

狼はズルタンに裏切られて怒ったり、森で勘違いをして怯えてたりしていて性格もなんとなく分かるんですけど。

 
ズルタンがどんな犬なのか私なりに考察してみました。

1.「忠実な犬」なのでご主人様の利益を優先するのは当然。狼が命の恩人なんてことは関係ないよ。
骨の髄まで忠犬ズルタン。

2.成り行きで狼の作戦に乗ったけど、別段命が惜しかったわけではないので狼には大した恩義を感じていないよ。
ドライ・ズルタン。

3.狼にお礼を要求されることも見越して作戦に乗ったよ。狼は利用してやった。
狼より狡猾ズルタン。

 
素直に「ズルタンじいさん」を受け止めるなら1ですが、作品から受けた印象だと2です。
3もあり得そうだけどこれが一番嫌ですね(笑)

 
正解は分かりませんが、ズルタンは何を考えていたのか気になります。