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平安犬事情 『枕草子』に登場する犬

本日はかの有名な『枕草子』に出てくる犬の話です。
犬の名は翁丸(おきなまろ)。
『枕草子』九段「上に候ふ御猫は」に登場します。

タイトルに猫、とありますがこの猫が物語の引き金を引くんですね。
猫は命婦(みょうぶ)のおとどという名前をつけられ一条天皇(980-1011)に可愛がられていました。

清涼殿に昇殿するため五位の位を与えられた。
というところまでは理解できますが、猫の身でありながら乳母がついていたというのだから驚きです。
平安貴族は犬より圧倒的猫派だったんですね^^;

とはいえ犬が粗末に扱われていたわけではありません。
平安時代の犬は、
①狩猟犬として犬飼という専門家に世話されながら暮らす犬。
②野犬だったが人に懐いてかわいがられるようになった犬。
がいたといわれています。

翁丸はどちらだったのでしょうか。

 
ここで物語のあらすじをおって見たいと思います。

命婦のおとどを世話していた女房が猫を御簾の内に入れるため翁丸をけしかけるところから話は始まります。

「命婦に噛みつきなさい。」

といわれたおばかさんな翁丸は思いきり猫を追いかけてしまい、そのことを咎められて島流しにされました。
数日後自力で宮中に帰ってくるのですが、蔵人2人にぶたれ死んでしまいます。(蔵人が「死んだので捨てた」と言っているだけなのでたぶん死んでないんですが)
その後再び現れた翁丸でしたが、最初は名前を呼んでも反応しないため犬違いかと思われました。
後日清少納言が「翁丸は死んでしまって実にかわいそうだ。どんなにつらかっただろう。」と言うと犬が体を震わせて涙を流したので、やはり翁丸であると分かるのです。
犬にもこのような心があるのだなあと天皇も感心し、翁丸は許されました。

 
私が気になったのは犬の島流しと、翁丸は本当に泣いたのか。というところです。

まず1点目。
翁丸が流されたのは犬島というところらしいのですが、これはいったいどこのことなんでしょうか。
調べてみると岡山県に犬島という名前の島が存在しました。
ウィキペディアによるとこの島の名前の由来のひとつに犬島の比定地である、とあります。

どうも平安犬たちが悪さをすると流されたという「犬島」がどこのことなのかははっきりしないようです。
仮に翁丸が岡山県の犬島に流されたとするとどのくらいで都まで帰れるのか計算してみました。

岡山—京都の県庁間最短距離171.2km。
翁丸は犬ですが人間の平均歩速、毎時4kmで進むとし、1日に14時間歩いたとします。

ものすごく雑な計算ですが、これだと3日くらいで到着ですね。

翁丸が島流しにされてから3、4日が経った頃に翁丸が帰ってきたとあるので整合性は取れます。
岡山京都間を3、4日で帰れる気がしなかったので実は島に流されてないのでは?
と思ったんですが、これは流されてそう。

 
次に翁丸は本当に泣いたのか。という疑問を解決したいと思います。
震えながら涙を流す翁丸はいじらしく、「上に候ふ御猫は」を良い話たらしめる重要なシーンです。

しかし!
グーグル検索をしてみると犬は感情が昂って泣くことはないと出てきました。
緊張しているとか目にゴミが入ったという場合がほとんどらしいです。

翁丸は緊張していた……?
していた。かもしれません。
でもそれだったらもっと早い段階で泣いていてもおかしくないような。

とすると、目にゴミが……?
ゴミが原因で涙を流していたとしたら、誤解ではありますが翁丸にとってはとてもラッキーでしたね。
翁丸は「誤解だけど、まあ良いか。」と思っていたりしたんでしょうか(笑)

人と犬の寿命はどのようにして決まったか

今日の童話犬シリーズでは『寿命』を取り上げます。

厚生労働省が発表している最新情報によると、日本人の平均寿命は男性80.21歳。
女性86.61歳。だそうです。
一方犬は大型犬と小型犬、犬種にもよりますが、おおよそ12から15歳くらいが寿命のようです。

人間と犬ではかなりの寿命差がありますよね。
どうしてこんなにも差があるのでしょうか。

当たり前のように思っていましたが、80歳まで生きる犬がいないのはなぜなんだろう。
と、ふと疑問に思いました。

 
『寿命』は人間や犬、ロバ(馬のパターンなどもあり)、猿の寿命について語られる話で、パターンは2種類あります。
1つはで見られる、3匹の動物が人間に寿命を分けてくれるイソップ童話パターン。
もう1つは神様が寿命を与えてくれるグリム童話・インドの昔話パターンです。

どちらのパターンにも犬は登場しますが、今回は後者のパターンで話を進めていきたいと思います。

グリム童話の『寿命』で登場するキャラクターは元々同じ寿命を貰う筈でした。
なんと人間も犬も馬も猿も、みんな30年!
現代に生きる日本人から見るとずいぶん短いように思います。

しかし物語に登場する人間以外の動物たちは、寿命は30年もいらないと言いました。
ロバは重い荷運びを30年もしたくないと言って寿命を18年に減らしてもらい、犬は30年も走り回ることはできないからと12年にしてもらいます。
猿は30年もおちゃらけて生きるなんて耐えられないと寿命を10年まで減らしてもらいました。

最後に、30年の寿命じゃ短すぎますぅー!!とごねた人間がどうなったかというと、ロバと犬と猿が神様に返した寿命を足してもらえることに。
ですがこれでめでたしめでたし、にはならなかったんですね。

最終的に人間の寿命は70年まで延びましたが、足された寿命は元々の持ち主の形質を受け継いでいたのです。
最初に貰った30年の寿命が終わると、次にくるロバの18年では様々な重荷を背負わされものすごく働かされます。
次が犬の12年。
犬が12歳にもなると足腰が弱くなり歯も抜けてくるのと同様に人も体に不調が現れ出します。
そして最後に猿の10年。猿のように他人に笑われ生きる10年です。

確かに寿命が30年というのは短いように思いますが、こうやって見ると欲張った甲斐あったような…なかったような…。
だいぶ皮肉の利いたエンディングです。

 
ちなみに、イソップ童話パターンでも流れはいっしょです。
動物から寿命を分けて貰っても人間の一生は上記のような感じになります。
寒さに凍える動物たちを家に招き入れ、良くしてあげたお礼に寿命を分けてもらうのに、です。
お礼の寿命なのに苦労させるのか!
と、妙にもやもや(笑)

 
と、まあこんな感じで人間の寿命は70年、犬は12年と定められたわけですが現実では必ずしも70歳ぴったり、12歳ぴったりでお迎えがくるとは限らないですよね。

犬の最長寿命は、29歳5ヶ月でギネスに認定されています。
オーストラリアン・キャトル・ドッグという犬種でオーストラリア原産の中型犬です。
犬の29歳5ヵ月は人間でいうと130歳以上になるらしく、人間の最長寿ギネス記録122歳を超えます。

犬の寿命は、大型<中型<小型と長くなる傾向があります。
しかしこの世の生物全般を見ると、一般的には体の大きい動物の方が長生きです。
ネズミよりウサギ、ウサギよりゾウ。といった具合に。

びっくりして寿命が縮んだ!
という話を聞いたことありませんか。

あれには根拠があったんですね。
恒温動物は一様に、一生で刻める心拍数が決まっているといわれています。
心臓が15億回拍動すると永遠の眠りについてしまうのです。

小型の動物の方が心拍が速いので早世ということになりますね。

では、なぜ犬がこの法則に当てはまらないのかというと、犬は人間と暮らす間に品種改良され元々の自然な姿とは異なるから。ではないでしょうか。

『寿命』の中で犬は寿命を12年と定められました。
一見短い生涯のように思えましたが、こうやって考えてみるとなかなか良い一生なのかもしれません。
人間でいう80年を約12年に凝縮して過ごすということですからね。

太く短い犬の一生。
つい、飼い犬との時間を大切にしたい!
と思ってしまいます。
わたしは犬飼ってないんですが…。